138億年の物語

 ひどいことが起こったのは知っているよ。確かにね。でも実際にそれが起こってみて、君はもっと前のひどいことでできた自分の空白を埋め合わせるために、あのことを利用していたんじゃないかって思ったんだ。だったら感謝しないといけないんじゃないかな。今まで自分の空白を埋めてくれてありがとうって。ひとつ前のアレもそうだったのかもしれない。これでやっと、君のひどいことがちゃんと終ったんだ。さあこのウニお食べ。イクラも。中トロもあるよ。九州と言えばアジサバだろう。左手の小指がヒクヒクとしているね。ギュッとなるまでは、みんなで歌を歌え。言葉を綴れ。色んな景色を見よ。次の住人のために、トイレのドアに近所のおいしい店のメモを残すのもいいかもしれない。ほら、月は綺麗だ。雲で見えないけれど。180億年を越えると、僕たちは光速以上の早さで去って行く宇宙を見ることができない。今はまだ138億年だ。たくさん星はあるんだ。