2011-03-03 遺産 story きみは誰よりもぼくの気持ちがわかるし、ぼくは誰よりもきみの気持ちがわかる。 でもぼくたちは世界中のどんなふたりよりも、お互いの気持ちを伝え合うことができなかった。 わかりすぎるがために。 「さよなら、さようなら」 フェンスの上にとまったカラスが話す。 「なにもかもわかられているし なにもかもわかってるでしょ」 黒い色したあいつがそう言っても、あの人の浪漫は、リアリズムとファンタジーのあいだで揺れている。