おててつないで

 使われなくなったトンネルは、入り口も出口も封鎖されたりするらしい。どっちが入り口でどっちが出口か、って話だが。
 ある年の夏、蒸し暑い深夜、短大生の女の子三人組がドライブをしていると、そういうトンネルに出くわした。女の子三人組は車から降り、物珍しげに封鎖されたトンネルを眺めた。
 一人の女の子が、コンクリートで塗り固められた入り口の横に、人が一人通れるくらいの穴を見つけた。三人で近寄って見てみると、明らかに人為的に作られた穴で、まあ封鎖されたトンネルと言っても、時々中をチェックするんだろう、そのための入り口だろう、と三人は結論付けた。
「ちょっと入ってみない?」
 一人がそう言ったとき、他の二人は気乗りがしなかったが、その場の勢いで「行ってみようか」と声をそろえた。
 トンネルの中は、なんとか足元の地面が見える程度の明るさだった。いま通った入り口と、反対側にも同じような穴があり、両方からかすかに光が差し込んでいた。
 だが、中間地点までくると、さすがに足元すらも見えなくなった。全く光の届かない、深い井戸の底のような闇だ。三人は急に恐くなった。
「手つなご……」
 と震えた声を出したのは、最初に「入ってみない?」と言った女の子だった。
 三人はしっかりと手をつなぎ、入り口に引き返した。入り口が近づくにつれ、再び足元の地面が確認できるようになった。三人はおぼろげな足元に目を凝らし、しっかりと手をつなぎ、一歩一歩慎重に入り口へ向かった。そして、トンネルの外へ出る瞬間、三人は繋ぎあっていた手をほどいた。
 車に戻りながら、三人は封鎖されたトンネルを振り返りつつ言った。
「よかった、あたし真ん中で両手つないでもらって」
 三人ともそう言った。