クゥクゥとハロウィーン

 小学生のとき、近所にクゥクゥという名の犬がいた。僕が前脚を持ち立たせて歩かせると、いつも「くぅ〜 くぅ〜」と、楽しいのかしんどいのかよくわからない声を出していた。やんちゃな小学生時代だったので、もしかしたら犬がきつい思いをしているのかもしれない、などと考えることもなく、よくそれをやって遊んでいた。そして今、僕のお腹から、あのころのクゥクゥのような音がしている。
 先日会社がハロウィーンだった。仮装勤務の日というやつだった。でも別に仮装して出勤することが義務付けられているわけではない。好きな人はコスプレレベルで仮装してくるし、ちょっとオレンジ色の何かを身につけるという人もいるし、何もしない人もいる。僕の場合はシャツが若干オレンジ色で、靴がオレンジ色だった。偶然。
 普段取り澄まして仕事をしているような若い女性が、急にとんでもないミニスカートのコスプレでやってきたりしてびっくりした。すごい気合いが入っているので、何か言わなきゃいけない気になったけど、一番素直な感想は「すごいですね」だった。すごいですねと言われても困るだろう。似合いますよ、も仮装なので少し変。あとは服装に合った言葉、エロいとかキュートとかセクシーとかになるけど、それは言いたくない感じ。いっそ「パンツ見せろ」でいいんじゃないかと思った。
 それにしても一般的なハロウィーンの仮装って、テレビで見る限り案外グロテスク路線のようだ。うちは全然そんなことなかった。ひとりだけ、ナタで頭をかち割られたまま、一日を真顔で過ごした女性がいた。次の日は社内で実施される健康診断の日だったようで、頭はちゃんと治っていた。