田植えシーズン

 朝起きて、部屋の窓を開け、煙がこもらないよう身を乗り出してタバコを吸っていたら、国道を挟んだ向こうの田んぼから、キャッキャした声が聞こえてきた。見ると、田植え機に乗ったおじいさんと、二十歳すぎくらいの女の子がなにやらにぎやかにしていた。
 女の子はふだん見かけない子だったので、たぶんおじいさんの孫娘といったところだろう。ジーンズに長靴、帽子をかぶっていて、たぶん田植え仕様。このあたりでは、田植えシーズンになると、それぞれの家にどこからか若い人たちが集まってきて田植えをする。土日に親戚どもを集めてやってしまうのだ。
 夕方に田植えの終わった田んぼを見たら綺麗だった。年齢が上がっていくにしたがって、昔は「ふーん」くらいにしか思わなかった色々なことに、心を奪われるようになった。桜でも、二十代のころは「ああそう、また咲いたの」くらいしか思っていなかったような気がする。
 というわけで、今年はついに田植えの風景でちょっと感慨にふけってしまった。なんて、本当はその孫娘さんがえらい可愛かったから印象に残っただけなんだけどね。