それを

 久しぶりに海を見に行った。晴天続きの最近のなかでは、最も雲が出た午後だったけど、雲に落ち着く海もいい。
 往復で二時間超クルマを運転したが、久しぶりの長時間(?)運転が結構しんどかった。クルマはいつも乗っていないと駄目になるのかもしれない。
 六月からは、仕事先が完全にカレンダー通りの休日になるし、電車通勤になる。土日祝にあまりクルマを運転したくない僕は、あんまりクルマに乗らなくなっちゃうかもなあ。
 海に着くと、視界に見える限りでは、他の人が二人しかいなかった。はるか右の方に釣り人がいた。少し先の左の方では、おじさんがテトラポットに座っていた。おじさんは何をするでもなく、じっと海を見ているようだった。
 僕はずっとクルマにいて、今後のことをざっくばらんにメモに書いてみたり、MacBookで書物をしてみたり、iPhoneのボイスメモに出てこないサビメロディを吹き込んだりした。
 海に来て一度も地面に足を下ろさないのはどうかと思い、一時間くらい経ってからクルマを下りた。さくさくの砂浜に若干埋まりながら、波が寄せるギリギリまで歩いて行って、ひとしきり海の向こうを眺めた。やはり曇り気味の海もいい。写真にすると台無しだが、なんというか、続いている気がする。土と海と空が。
 僕がクルマを下りたあと、テトラに座ってひたすらに海を眺めていたおじさんは、ちょくちょくと僕のことを気にしていたように思う。せっかくの時間を、僕のせいでそわそわとさせてしまったんじゃないだろうか。申し訳なかった。海を見ていると、ほんとにこの星はすごい星なんだなと思う。
 家に帰ると、クルマの半年点検のお知らせが、ディーラーから届いていた。