2015年の花見

 今年もいつもの場所に桜を見に行った。家からクルマで十五分ほどの場所。今年も大木の山桜は見事だった。去年は、少し黒田官兵衛ゆかりの場所なので、大河ドラマの影響で人が多いかもと思った。だけどそんなに人は多くなかった。今年のほうがたくさん人がいた。それでも、混雑するという感じではない。
 ちょっとだけ人がいる場所で山桜を眺めながら、例えば東京上野公園のような人だかりでの花見ってどういうことなんだろうと思った。否定しているわけではない。どういうことなんだ、ってこと。
 たとえば知り合い連中で暖かい春の昼下がり、人がたくさん集まる場所でブルーシートを敷いて花見なんてことになれば、僕はほくほくと楽しむだろう。たぶんお酒もいい感じに飲むだろう。でも今日はふと。
 賑やかな花見は、数年前会社の同僚と小倉城でやった夜桜見物が最後。そう言えばあのころは、やたらとイベント的なことをやっていたな。
 今日人が多かったのは、どうやら昨夜のニュース番組であの場所が紹介されたかららしい。お酒は入ってなさそうだったが、やけに陽気なおじさんが、「いやーすごいねえ、昨日テレビに出て、今日もうみんな来るけねえー」と言っていた。「この山桜すごいねえ、日本で三本の指に入るんじゃないか?」と威勢よく言ったあと、すぐに「そんなことないか!」とも言っていた。おもしろい。
 そんな山桜とは別に、あの付近には、一本のとても綺麗な染井吉野がたたずんでいる。駐車場から山桜に向かう途中、道を神社のほうへそれていけば、神社の境内にその染井吉野はいる。
 神社は去年の今ごろ改修工事をしていたが、今年は綺麗になっていた。一昨年までは、朽ち果てたような神社だったのだ。賽銭箱もあったので、お賽銭をして二拝二拍手一拝をした。賽銭は最初の一発目を外したので、もう一発入れといた。
 神社を見て、「お、神社があるじゃないか」なんて心を持っていれば、あの染井吉野に巡り会えるんだよ。