デッドヒート

 なんとなく年齢不詳、家族構成不詳、日々の暮らし不詳な会社の上司に、今日、さりげない流れでもってして(そう思っている)、年齢を聞いてみた。ちょっと女子のような言い回しの答え方だったが、どうやら僕よりも五つは年上のようだ。
 だからなんだってこともないが、そういうふうに話をもっていく過程で、僕は自分の年齢を彼に告げた。
「明日○○歳になりますね」
 そしたら彼の反応は以下のようなものであった。
「マジで? ほんと? まだ若いじゃないですか! えっ? ○○歳ってほんと?」
 これはつまり、
(俺と同じ年くらいかと思ってたのにマジかよ! ほんとかよ! 結構な年下かよ!)
 ということであろう。
 二十代前半までは童顔かつ女顔という評判で過ごしてきた僕だけど、三十を超えてから急に、年齢よりも上に見られるようになってきた。でも、ここ数年はまた「ああ、年齢のほうが追いついてきたかな?」という感想を持っていた。でもやはりそうではないのかもしれない。
 でも、自分の勘なんだけど、僕はあと五つ、さらに十と年を重ねれば、年齢よりも若く見られるようになる気がする。なんか、そんな気がする。
 見た目と年齢のデッドヒート。それは結構生涯を通じて、抜きつ抜かれつのレースなんじゃないかなあと、思っている。