それがふつうだ

 時期的にはちょっとおかしいですねと、神主(?)さんからも言われたけど、一ヶ月ほど前、厄除けに行った。行ったのは、近所の小さな神社。神主さんも含めて、普段誰もいない神社だ。だけど、実はわりと格式の高い神社で、時折よその街からわざわざ人が訪れたりもする。
 そういう神社だから、厄除けなどやっていないだろうと思い込んでいたけど、父がいつの間にか手配してくれ、わざわざ神主さんがやってくる厄落としとなった。毎年あの神社でおみくじを引くし、なぜかとても好きな場所なんだけど、建物の中に上がりこむのは初めてのことだった。
 ちなみに行くことになった経緯は、親父をクルマに乗せて、買い物に行っているときの会話だった。
「そういや、厄除けって俺やってないなあ」
 という僕の言葉から始まり、厄除けってのはいったい、正確には何歳のいつの時期にやるのかとか、何歳まで厄があるのかとか、俺(親父)はもうないのか? みたいな会話から。
 なんとなくやってみようかな〜ということを言って会話は終わったのだけど、やるにしても、ウェブなんかで探して、自分で適当に大きな神社に行ってやるつもりだった。だが、その日の夜にはもう、親父から近所の神社の神主さんに連絡がされており、日程も決まっていた。
 休日の午前十一時。木に囲まれ、キイィィィィ! とするどい鳥の鳴き声を聞きながら百段以上の階段を上り、神社に着く。建物に上がって、なんとなく面識がある感じの神主さんと親父の会話に少し加わったあと、正座をして厄落としは始まった。
 玉串拝礼の作法にかなり戸惑ったけど、無事一連の流れは終わった。なんと言うか、ここ数年ついていないと言えばついていないなと思うので、これで来年はふつうになればいいなと思っている。まあ最近は、ついてない、でも別に平気だと思えるんだけど。これでついたらどうなるのかな。ついてないのが、人生のふつうだ。
 厄落としが終わって、お守りとちょっとした冊子と日本酒の小瓶をもらった。お守りは気が付いたときは胸のポケットに入れて持ち歩いている。落としてしまいそうだけど、下半身のポケットに入れるのはどうにも罰当たりな感じがするし、落としたら落としたで、厄が落ちた、なんて言うんでしょう?