スーパーガール

 午後からクルマの半年点検。クルマで小一時間の道のり。いつも混む区間があるから、一時間前に家を出たけど、全く混むことなくすんなり四十分弱でクルマ屋に着いてしまう。着く直前に「あ、早いな」と思ったので、左手すぐ目の前にあったセブンイレブンに入ろうとしたが、左折のタイミングを逸してしまい、結局そのままクルマ屋に着いた。
 あんまり早く店内に入って、「えー、もう来たのー……?」なんて思われるのも恥ずかしいので、店の駐車場でiPhoneなどいじって十分ほど時間を潰す。店から人が出てきませんように、と思いながら。しばらくツイッターなどしていたら、予約時間の十分前になったので、これならよかろうと店に入った。
 いつも、技術屋と営業の中間みたいな、微妙な雰囲気の男の人が受付にいるが、今日はおばちゃんがいた。「二時からクルマの点検お願いしてたんですけど」と言うと、「あ、すぐ来ますからちょっとお待ちください。今みなさんミーティングしてて……」という応対であった。なかなかお店の受付で、「今みなさんミーティングしている」という言葉は聞けない。
 ほんの二、三分で、技術屋と営業の中間みたいな微妙な雰囲気の男の人が出てきて応対してくれたけど、その前に例のおばちゃんが「よかったらお飲物でも」と言いつつ、メニュー(?)らしき紙を持ってきた。見たら、「コーヒー」「ジュース」であった。二者択一。とりあえず、何かはわからないが「ジュース」を頼んだ。しばらくロビーのテレビなど見ていると、おばちゃんはとても慎重にお飲物をソファ横のテーブルに置いて行った。ホットコーヒーであった。コーヒー豆のジュースなのかもな。
 それにしても、今日あの店にやってきたクルマたちには何かが起こっていた。「エアコンが、部屋用に例えると室内機も室外機もぶっ壊れていて、修理できるか総取っ替えになるかもわからん。少なくとも十万はかかる」と言われている人がいた。エンジンオイル交換に来てみたら、「オイルが空っぽの状態で、調べてみると何かがガバガバになっていて、全部漏れ出している」と言われている人がいた。僕のクルマも、右リアのブレーキランプがつかなくなっていて、それもランプ切れではなくて断線。継ぐことのできないコードらしく、ブレーキランプ丸ごとを交換することになった。約二万円なり。
 今考えると、僕らお客は不幸に見舞われたが、たぶんあのおばちゃんが何かすごい人なんだろう。店にとっては。クルマ買いそうな女の子までやってきていた。