すてきなあの子

 十万円借金をしている相手から、誕生日プレゼントとして三万円を貰う夢を見た。さすがに「じゃあ三万円分の借金を……」と言って即座に返すことはできなかった。だけど、日を改めて、返すしかないじゃんと思ったりした。
 先日、通勤途中のクルマの中、信号待ちのときバックミラーをふと見ると、後ろのクルマの女の子がニコニコした表情で歌っていた。たぶん、歌っていた。あれがもし詩の朗読だったのなら、その詩、楽し過ぎ。
 まるでアーティストのプロモーションビデオのように、情感たっぷりに、口を大きく開けて歌っていたので、思わず見とれた。信号が青になって走り始めるときにもう一度見ると、手を組んでハンドルの上に乗せ、ふわ〜ととても柔らかい表情で、その手の上にあごを乗せるところだった。やっぱり、プロモーションビデオかよ、と思ったけど、かわいかった。僕もあれくらい楽しくクルマを運転できるといいなと思った。