カップ ヌードゥルドゥー

 昼ごはん、久しぶりにカップヌードルスタンダードを食べたけど、たいへんおいしく感じた。カップラーメンは家にいつも数個買い置きがあり、ときどき無性に食べたくなるんだけど、タイミング的に家ではなかなか食べる機会がない。なので、会社に何個か持って行ってストックしている。仕事の日、昼休みになって、特に食べたいものがないなというときに、ロッカーから取り出して食べる。
 カップヌードルスタンダードで返す返すも残念なのは、あのよくわからない肉が数年前に変わってしまったことだ。今ウェブで調べてみると、今の肉は「コロチャー」と呼ばれるものらしい。以前の肉は「謎肉」と呼ばれている。まさに謎の肉で、考え込むと不安になる食材ではあったが、あれのほうがよかった。
 カップヌードルは、「自分は今、極限状態にいる」と想像して食べるとおいしい食べ物でもある。子供のころ、よく以下のような感じの想像をしていた。
「僕は山に迷いこんで一週間だ。今日の夕方、ようやく集落に下りられそうな沢を見つけた。これで明日にはこの山から脱出できるだろう。この一週間なにも食べず、水を飲むしかしていない。明日には脱出できるのだから、今これから、唯一の食料であるこのカップヌードルを食べよう」
 僕は拾った鍋に沢の水を汲み、落ち葉や枯れた小枝を集め、マッチでなんとか火をおこす。沸騰したお湯をカップヌードルに注ぐ。三分後、僕は香しい醤油の香りに幻惑されながら、カップヌードルを大事に貪る。謎肉を噛みしめながら空を見上げたとき、一羽のカラスが夕陽を横切るのが見えた。