こいばな

 どでかいイオンモールに行き、あの円柱状のスペース内を歩いていると、しばしば「俺は今、スペースコロニーにいる……」という想像をしてしまう。地球は滅亡し、選抜され限られた人々が今、このコロニー内で生活しているのだ、と。喫茶店も食べ物屋も雑貨屋も服屋も靴屋もスーパーもあり、私たちは地球亡きあと、何不自由なくここで生活している。
 そのような想像をしていると、途端に、このコロニー内にいる女の人の誰かと僕は恋をし、結婚しなければならないと思ってしまう。僕だけじゃない。みんなそうだ。世界はずいぶんと限られている。だけど、選抜された私たちは恋をしなければならない。でも、そういうことなんだ。世界には限りがあると知ったとき、人は恋をするのだ。