聖なる精の性

涼しいの精『暑い夏の日、涼しい処にたどり着いたときの「すずしー」には、(たすかったー)って気持ちがあるよね』
暖かいの精『寒い冬の日、暖かい処にたどり着いたときの「あったかーい」には、(しあわせー)って気持ちがあるよ』
涼「じろり」
暖「ぎろり」
涼「ま、十月中旬なんて中途半端な時期だから」
暖「ケンカはやめよう」
涼「お、だんなが風呂からあがってきたよ」
暖「あがってきたね。湯気ぽかぽかだね」
涼「だね」
暖「おーっと部屋の窓全開だよ。今夜は結構寒いよ?」
涼「ぽかぽかだから、(すずしー)なんだよ」
暖「でもでも、今に寒くなるよ。俗にいう、湯冷めだよ」
涼「でもでも、もう布団を敷き始めたよ」
暖「寝る気だ」
涼「あ、冬用のかけ布団だ」
暖「あ、その上に毛布まで」
涼「まだ十月なのに。いくらなんでも(あつーい)だよ」
暖「でも、窓を閉める気配がないね」
涼「しかもティーシャツのままだね」

(今日は部屋を寒くして、ティーシャツで、かけ布団と毛布で寝よう。さむくて、あったかくて、しあわせ)

暖「わたしたちも、一緒に寝てみる?」
涼「うん」

(ちょうどいいー)が生まれたのは、それから十月十日後である。