醤油ラーメンに纏わるetc...

 ちょっと前から気になっていた、クルマで10分ほどの場所にある、「醤油ラーメン」って看板の店に行ってきた。まだ「食べログ」にも載っていないような開店したての店。魚介系スープのあっさり醤油ラーメンで、味の感想としてはいたってふつう(チャーシューはうまかった)。もう行くことはないかもな。まずくはないんだけど、あの店の近くには、もっとうまい魚介系醤油・塩・味噌のラーメン屋があるから。なかなか醤油ラーメンの店がない福岡で、なぜか最寄りラーメン屋が醤油の店。
 他に醤油ラーメンで食べに行くところといえば、リバーウォーク地下のラーメン屋さん。たぶんチェーン店だと思うけど、こちらはこってり系醤油。京都系と言えばいいのかな。まー喉が渇くほどの真っ黒な醤油ラーメンで、たまに食べたくなる。京都は薄味の街で、東京の真っ黒うどんなんかを馬鹿にするのに、ラーメンは真っ黒で不思議。
 今日魚介系食べていて「東京の、なんの変哲もない、中華そばと呼ばれそうな醤油ラーメン食べたいなあ」と思った。福岡にある醤油ラーメン屋は、やはり圧倒的とんこつ人気に対抗するため、なんかするのよ。魚介だしだとか、超こゆいとか。そうじゃなくて、超普通の醤油ラーメン食べたい。また探そう。
 それはそうと、今日行った店は、開店一番目のお客さんには、小さな金箔をスープに浮かべてラーメンを提供するらしい。なぜそんなことを知っているかというと、今日僕が開店直後に入店したから。初めて金箔食べた(?)けど、なにも感想はない。銀は食べられない、金は食べられる。そんなことをほんのり想いながら、久しぶりにちぢれた麺をすすった。
 そういえばだいぶ前、仕事帰りにリバーウォーク地下のこってり醤油ラーメンの店に寄ったとき、僕が注文をし終えたくらいのタイミングで、なんて言うんだろう、古のお嬢様みたいな女の子がひとりで入ってきたことがある。
 古のお嬢様ってのは、襟元がちょっとだけフリフリした白の清潔なシャツを着ていて、水色のシンプルな、時代遅れのロングスカート、髪の色は真っ黒で長く、肩下20センチくらい、前髪は凝ることもなくちょうど眉毛の部分で整えられている。目はどんぐりまなこの二重、鼻、口に特徴はなく、肌の色は白く整った顔立ちだが、女としての魅力は特に感じない。そのようなお嬢様が、このようなラーメン屋にひとり現れ、ラーメンとチャーハンを注文しているのを見ると、「お屋敷から脱走してきたのかな」などと考えてしまう。
 奇しくも僕は、同じ「ラーメン+チャーン」を注文していたのだけど、僕よりあとに同じメニューを食べ始めたお嬢様は、その見た目とは裏腹に僕より早く食べ終えた。とてもおいしそうに麺をすすり、真っ黒なスープを口に含み、その余韻が消え去らないうちに、これまた醤油味付けの黒いチャーハンを頬張り。その操作の連続で、一心不乱に食べていた。僕はそんな幸せそうな光景を時折ちらちらと眺めながらラーメンとチャーハンを食べた。冗談で、「僕ならもっと君に面白いことを教えてあげられるよ」とか考えながら。でもあれはほんとに、幸せな光景だったな。もし「ラーメン好きだけどひとりでラーメン屋なんて……」と考える女の人がいるなら、気にせずどんどん行きなさい。貴女がお嬢様でなくてもね。