網戸

 クモの巣ってのはほんとにむかつくもので、よくもまあこの位置に張りやがったな、といつも思う。庭に出る勝手口からすぐのところとか、庭から道に出る曲がり角の出口とか、あいつらほんとは僕の顔にクモの巣が引っかかるのを「うっしゃー! あいつまた引っかかったー!」って楽しんでいるんじゃないかと思えるほど。
 でもまあ実際は、あいつらはあいつらで虫を取るために丹念に巣を張っているわけなので、毎回毎回丹念に作った罠を僕に破壊されて、心穏やかではないだろう。かと言って僕が「かわいそうだな……」と思うわけもなく、なんというかお互い学習しろよ、って感じ。そんなとこに巣を張ったら毎回僕が引っかかるだろう? 毎回引っかかる自分もどうなのよ?
 というのが去年までの状況であったのだけど、今年の夏は、クモの巣の位置が絶妙。無防備な僕が当たり前のように引っかかってしまう位置には一切無く、毎日どこに張ってあるかというと、僕の部屋の奥のトイレの小窓の外に張ってあるのである。
 このトイレの小窓は、庭の中でもわりとジメジメした部分に面していて、僕の部屋に蚊や小蠅が入ってくる一番の原因となる小窓なのだけど、なんとそこに、網戸のようにクモの巣が張ってある。数日前の朝なんかは、ちょうど引っかかった蚊や小蠅など(4匹いた)をムシャムシャ食べているところを目撃した。
 全くもってしてグッジョブなんだけど、今日見てみたら、あまりにも巣がよれよれになっていた。そろそろしっかりしたものに張り替えて欲しいところだけど、これまでのいきさつがあるので、なかなか気持ちは通じないようだ。