海へ来なさい

 釣りをしたい。
 確か去年の今ごろもこんなことを言っていた気がするけれど、釣りをしたい。だからお休みの今日は、釣りのことを色々と調べた。
 まず、釣りをしたい場所は海である。そしてやりたい釣りの種類はルアー釣り。生餌を使わず、疑似餌(ルアー)を餌のように見せかけ、魚を掛ける釣り。
 なんといっても僕はヘビ様を代表とする細長いうにょうにょとした生き物が苦手なので、とにかく餌釣りってのはいやなんだ。まあオキアミとか小エビとか、うにょうにょしていないものを餌にした海釣りはあるんだけど、釣りの前にそれらを準備するっていうのも面倒くさい。もっとこう気軽に、部屋にあるものをポンとクルマに積んでそのままポイントに直行すれば釣りができる、そういう風にしたい。
 小学生高学年のころと、大学生のとき、世間的に異様にルアー釣りってのが流行った。ブラックバスね。僕は小さなころから近所の川で、竹竿でハヤやドンコなんかを釣っていたし、七夕の短冊に『釣りキチ三平になりたい』なんて書いていた人間だから、当然そのブラックバス釣りブームには乗っかった。ルアー釣りってのは餌釣りに比べて圧倒的に釣果は少ないのだけれども、経験もあることだし、釣りをするなら海ルアーをやりたいのです。
 それにしても、海ルアーやるとなると、やっぱり釣った魚は食べたいたなと。そうなるとおいしく食べるのが釣った魚に対する礼儀であるので、魚の持ち帰りかたをGoogleで色々と調べてみた。すると、持ち帰るなら釣りあげてすぐ活け締めにするのがおいしく食べるコツであるし、なおかつじわじわと死に至らしめて魚を苦しめない方法でもあるらしいし、海釣り人の常識であるらしい。小生納得。というわけでYoutubeで釣った魚の締めかたの映像を色々観たんだが、まさに戦慄の画像の連発であった。必殺仕事人みたいな。なぜか歯医者を思い出したよ。というかこれこそ捕らぬ狸の皮算用ってやつだな。
 釣りをしている人たちには、それぞれにその理由があるのだろう。魚とのやりとりを楽しみたい、自分で釣った魚をおいしく食べたい、狩りの本能を満たしたい、単なる暇つぶし。僕はただ、海の見える場所に自分を置いておきたい。でも、そんな場所で一日中何もせず、ただ佇んでいられるほど人間ができていないし、あるいは枯れてもいない。だから釣りをしたい。一匹も釣れなくていい。ただ、海の見える場所に自分を置いたときに、ひとつやれることがあれば、この若さを抑えられる。考えるともなしに考えたいことや、決めるともなしに決めたいことがたくさんあるんだ。だから、海に行きたい。