認めたくない人

 やっと、ついに、やっと、難攻不落のエッセイを読み終わった。僕はつまらないと思ったら、その本は途中で放り出していいと思っているけど、実際に放り出したことは、多分生涯で、両手で数えられるくらいしかない。貧乏性ってのもあるけど、放り出したくなるほど、辛くなるほどつまらない本って滅多にないからだ。どの本もそれなりに得るところがあるし、それなりに楽しい。逆に抜け出せないほどはまり込んでしまう本ってのも、あんまないけれど。
 だから、これまでに放り出した本について、僕は僕に対して自信を持って言える。これはつまらない、と。
 でもこの本はそうじゃないのだ。つまらない本なのではなくて、僕に決定的に合わなくて、つまらない本だったのだ。これまで僕は、決定的ってとこが重要なんだけど、決定的に考え方が合わないエッセイは、容赦なく切り捨ててきた。この本の著者と僕は、決定的に性格やものの考えかたが違うけど、読み切らねばならんと思った。
 読み終わって何を得たのかといえば、決定的な考え方の違いと、ふだん自分がむかつく考え方に、尊敬の心をもって触れられることもあるんだなということだ。むかつくけど、いつか俺もこう言うんじゃないか、みたいな。
 まあ、こうはならねえぞって反骨心もあるんだけどね。