今日は七夕なので仕事休み。

 最近なんだか夜ぐっすりと寝られないので、昨夜の僕はやる気に満ちていた。死ぬほど寝てやるぜ、と。あまり早い時間に寝ると真夜中に起きてしまうことになるので、タイミングを見計らう。確か二時くらいだっただろうか、ここだ! と思って眠りについた。昼くらいまで、十時間近く寝るのを夢見て。
 話は変わるが、うちのばあさんは物の考え方がものすごく古い人である。当たり前か。でも当たり前じゃないところがあって、それをなんとか文章にしてみると「そうと決まっていることは、例え人の気持ちを踏みにじってでも貫かれるべきである」となるだろうか。
 そんなばあさんが貫いていることの一つに、「出かけるときは必ず家族に行き先を告げ出かける。それが家族というものだ」というのがある。もちろん僕も両親も、そんな決まりはあまり守らない。家にばあさん一人が取り残される、という場合を除いては、好き勝手に出かける。「さあ出かけるぞ」ってときにたまたま居間にばあさんがいれば、「ちょっとどこそこ行ってくる」くらいのことは言うが。
 ばあさんはいつの間にか出かけていた家族に対し、帰ってきてからぐちぐちと文句を言うが、これもみんな無視である。未だ封建制の社会に住むばあさんを説得することはもう無理だし、かと言って、従うこともできない。それはまあいいんである。
 問題はばあさんが出かけるときなのである。本日は僕が在宅、両親はそれぞれ外出、そしてばあさんは朝から病院に出かける、という日であった。つまり病院に出かけるばあさんが、「そうと決まっていることは、例え人の気持ちを踏みにじってでも貫かれるべきである」という信念でもってして出かけることを告げるべき相手は、すやすやと寝ている僕しかいなかった。
 まず八時。
「ばあちゃん今日病院行ってくるからね」
 一回目の起床。続いて八時十五分。
「八時二十五分のバスで行くからね」
 二回目の起床。続いて八時二十分。
「それじゃ行ってくるからね。お願いね」
 三回目の起床。
 いったい何をお願いしているのだろう…… はじめてのおるすばんか? などとむかむかしつつ、もうそれ以上寝ることは無理であった。以前大学の先輩が、「俺、車運転してるときに眠くなったらいやなこと思い浮かべて怒ることにしてんだよ。ほんと目が覚める」と言っていた。少しずつ時間を置いて三度の覚醒、起きるたびにむかむか。これこそ、完璧な目覚まし時計ではなかろうか。