数年前に福岡に帰ってきて、僕には二軒の好きなラーメン屋ができた。だが二軒ともなくなってしまった。一軒は小学生のときから好きだったラーメン屋なんだけどご主人が亡くなり、もう一軒、国道沿いの店は真夜中に車が突っ込んで爆発炎上した。好きなラーメン屋が爆発炎上する人生です。
 爆発炎上したあとの建物はすぐに片付けられ、あっという間に新しい建物の建築が始まった。もともと綺麗な建物のラーメン屋であったが、それに輪をかけて綺麗な建物が建ち始めた。ラーメン屋の建物の外観なんてどうでもいいので、僕はただ、お洒落な建物にしてるなあという感想だった。建物が変わったところで、味は変わらんだろうと。だが急転直下、予想だにしなかったことが起こる。
 建設は着々と進んだ。白色の清潔な壁、ややくすんだ赤色の屋根。そして小鳥が遊びに来そうな庭、普通の玄関……。そう、かつてラーメン屋だったその場所は、ただの民家になったのであった。爆発炎上から再建築までの期間が異様に短かったので、てっきりやる気満々リニューアルオープンだと思っていたのに普通の家。
 そんなこんなで、今では僕はほんとに好きなラーメン屋というのを持っていないのである。今日もその元ラーメン屋、現民家の横の道を通るとき、心の中でチッと舌打ちをした。中に住んでいる人からすればひどい話である。