「それにもうひとつ、ここには美があるんだよ。あこがれと呼んだほうがいいかな。目が覚めてから、人は現実と比べてみる。そして、まわりの川の水や空気がよごれているのに気づき、これじゃいけないと思うわけだよ。人が夢の世界を持っていなかったら、現実に対してなんの批判もしなくなり、ただただ現実に押し流され、ずるずるとだめになってゆくだろうね。時にはこの夢の国が、一時的にものすごくひどくなることもあるが、その場合は目がさめてからああなってはいけないんだなと知るわけだよ。いずれにせよ、現実の世界は、それぞれの人の夢の世界で支えられているともいえるんだよ」

「ブランコのむこうで」星新一


 夢しか見てない人、あるいは逆に、現実しか見てない人へのメッセージって感じ。リアリズムってやつもなかなか難しい。