くつがえされたいおひめさま

 弁当屋で昼飯ができあがるのを待っていると、テレビのワイドショーからショーケンのニュースが流れたので注目。店内には僕のほかに二十歳くらいの女の子ふたり組。
 ショーケンのニュースのあとは、結婚しない三十代女、なんて特集。お決まりの街頭インタビュー。「いい男がいないから」という言葉に、若い女の子ふたりがふきだして、店内はなんとも言えない雰囲気。弁当屋を出る。


 夕方あてにしていた酒屋に寄ると、店のシャッターは閉ざされていた。しかたなく十分ほど歩き、大量に酒をあつかっているドラッグストアに行く。いつものようにジョニーウォーカーを買おうと手に取るも、なんだか感触がおかしい。でかいのだ。700ミリリットルのはずが1リットル。かつて一万円もしたというジョニーウォーカー。帰国のおみやげジョニーウォーカー。それが今「お徳用」などというレッテルを、文字どおり貼られている。


 大槻ケンヂのエッセイは、わりと気軽に読んでたんだけど。

 公園でうたた寝をし、よく本を読み、好きな作家のお墓まいりに行く、なるべく野菜を食べ、まだ行ったことのない暑い国へ思いをはせる。相手の言ったささいな言葉を忘れず、なるべく多くの詩を書く。

 素晴らしいなあ。


 梨木香歩のエッセイの行間からは、なにやらちくちくしたものが飛んでくる。前読んだやつは少し特殊とはいえいわゆる身辺雑記だったし、そうでないにしても身辺を語っていくうちに何かが詰め込まれた、という感じだった。だが今読んでいるやつは、なにかを語るために身辺を題材にしている、という感じもする。その“なにか”とは、昨今の日本をとりまく事情。
 でも気のせいかな、ただ人間を描いているだけのような気もするな、と思いつつ表紙を眺めていてハッとした。本のタイトルは『ぐるりのこと』であった。