雨のカーネーション

久しぶりに銀行振り込みっちゅうやつをしたんだけど、なんで僕は銀行に行くと毎度毎度びくびくしてしまうのだろう。今日もびしっとスーツを着た行員に入り口で「いらっしゃいませ!」と言われた瞬間、何も悪いことをしてないしするつもりもないのに、どうしようもなく身の潔白を証明したくなった。僕は銀行強盗なんてするつもりはないのです。あんな成功率の低い犯罪など。
身の潔白を証明するため、わざとらしく、かつ大げさに ATM を探すふりをし、その場所に到達するとまたもやわざとらしくカバンから手帳を取り出す。そこにメモされた振込先にはした金を入金しておしまい。作業を終えるころには手のひらにじっとりと汗をかいていて、ATM のタッチパネルが反応しないほどだった。その後やはりわざとらしく手帳をカバンにしまいながら銀行を出ようとすると、例の直立不動行員が「ありがとうございました!」と言いながらギラリと目を光らせた。きっと僕は銀行強盗の生まれ変わりで、彼は僕を追い詰めた腕利き刑事の生まれ変わりなのだ。久しぶりだな、また来世で会おう。