黄色信号ふたつ

 日食に比べどうも月食にはあまり興味がなく、ふふん、みたいな気分で夜を過ごしていたんだけど、Twitter のタイムラインに乗せられ、庭に出て空を見上げてみた。というか福岡は月食の夜、完全に曇り予想だったので、最初から見られないだろうと思って醒めていたんだ。
 だけど、雲はわりと切れ切れで、欠けていく月を見ることができた。寒かったし、長い時間の天体ショーだったので、部屋に戻りつ庭に下りつつ、タバコを吸いながら観た。
 晴れているところでは、皆既に近づくにつれ月は次第に赤みを帯びていき、最終的には赤い月が夜空に浮かんでいたみたい。気づいたこと。あの赤い月ってさ、わりかし肉眼ではっきりと見えたけど、極々薄い雲の流れにもかきけされてしまうほどの明るさなんだ。そしてたとえ地球の影にかき消される寸前であったとしても、影に隠されていないわずかな部分は、薄雲ごときには消されない。
 だから、皆既の瞬間ちょうど薄雲がかかった僕のところでは、ほんとに月が消えてしまった。昔の知らない人がこの状況観たらびっくりしただろうな。「あれ、月消えた? いや、赤いのがあるね」じゃなくて、ほんとに消えちゃうんだから。
 そんな感じで何も無くなってしまったから、部屋に戻って、しばらくしてからまた庭に下りて見てみた。そしたら薄雲が取れていて、赤い月が浮かんでいた。ああこれがほんとの皆既月食だって思ったけど、月が消えてしまう似非皆既月食はよかったよ。
 次の日の仕事終わり、クルマで家路を急いでいたら、十六夜の月に向かって走ることになった。月は、ちょうど分厚い雲の切れ目のちょっと上にあったので、沈む夕日現象と同じなのか、めちゃくちゃでっかく見えた。昨日ひどいことされたとでも思って、でっかくなっちゃったのかもしれないな。赤信号で止まったとき、ちょうど信号機の上にあって、黄色が二個だった。