漠然とした話

 いつもは左目だけ三重まぶたなんだけど、今日は右目も三重になっている。つまり風邪ひいてる。僕は疲労困憊状態になると声がハスキーになり(電話だけで「疲れてるね」と言われる)、病気になると右目が三重になる。とてもわかりやすい。立ち上がったり座ったりしゃがんだりしたときに、頭がズキズキする。あとはほんのり熱があるような気がするだけで、くしゃみ鼻水咳はなし。そんなタイプの風邪。
 以前と変わったなと思うのは、この手の風邪をひいたときに、ちょっと自分を疑ってしまう瞬間があることだ。「これは風邪じゃなくて、何か大きな病気の前兆なのではないか」とか。まあ本気で心配してるわけじゃないけど、例えば二十歳前後のころなんて、そんなこと考えもしなかった。
 そういえばこないだ体重計に乗ったらびっくりした。今現在、僕はいわゆるデの人じゃないけど、少年のころはガリガリガリクソンだったから、そのころとの体重差はひどいもんだ。「○○キロも増えたー」とびっくりである。そして僕はスポーツというものをほとんどしてこなかったから、増えた分は全部脂肪なのである。
「ほんとに溜め込んできたんだな」
 そんなふうに考えていると、溜まっているのは脂肪じゃないような気もしてくる。大人になって蓄積してきた悪いもの(例えばものの考え方とか)のような気がしてくる。大人になって溜めてきたものは決して悪いものばかりではないが、いいものはすぐに気化してふわふわとしたものになるような気がする。だから明らかに体に蓄積しているものってのは、どうも悪いもののような気がするのだ。
 と、そんなわけで(そんなわけでもないが)、僕は今日から少し健康に気を遣うことにした。ガリガリガリクソンに戻る気はないが、少し体を軽くしたい。