半笑いの沈黙

 いつもは電車で出かける街へ、バスに乗って出かけた。
 久しぶりに本屋に行ったら、欲しい本が山ほどあった。こんなことは珍しい。僕はたくさん本を読みたいと常々思っているけれど、実はアンテナがかなりにぶく、「この本読みたいなあ」と思うことがなかなかできない低体温動物なのだ。本屋に行っても何も買う気が起こらないことがしばしばなので、いつからか手帳に、読みたい本のタイトルを常に二冊ほど書いておくことにした。Web を眺めてみてもわかるとおり、本当に本好きの人なら、読みたい本のストックなんていくらでもあるのだろう。もしそういう人たちが手帳に「読みたい本リスト」など作ってしまえば、ずらずらと本の名前が並ぶのだろうけど、僕は「常に二冊分をメモしとく」ってだけで必死。
 そんな僕が今日本屋に入ったとき、手帳に書かれていたメモは『大槻ケンヂのどれか』『田中小実昌−バスに乗って−青土社』の二行。本の背中を眺めるだけで幸せな気分になれる生粋の本好きの人たちと違って、僕はいつものように目当ての本だけを探す旅に出る。ゆったりと動く人たちが多い本屋という場所で、段違いのスピード。それなのになぜか、今日はたくさんの本が目についた。ほんとにこんなことは珍しい。結果、読みたい本リストはこんな感じに。
『ボクはこんなことを考えている』−大槻ケンヂ
『のほほん雑記帳』−大槻ケンヂ
『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』−中島らも
『雪の夜話』−浅倉卓弥
『静かな大地』−池澤夏樹
タモリのTOKYO坂道美学入門』−タモリ
『バスにのって』−田中小実昌
『ぐるりのこと』−梨木香歩
 パラパラとページをめくっただけだけど、タモさんの本がすごいかもしれない。文章を読んで、これ誰が書いたのかなと思ったくらいだ。誰か別の人がこの本に文章を寄せているのかなと。でも硬質な文章の中に「私が福岡から初めて東京に出てきたとき〜」って感じの一文を見つけて、おお、やっぱタモさんが書いているのかとびっくりした。
 全部大人買いしてやろうかとも思ったけど、カバンが重くなるのでやめた。梨木香歩大槻ケンヂの二冊を購入(大槻ケンヂブックオフで)。こりゃどんどん読まないといわゆる“積ん読”になるかも! というほんとの本好きの人みたいな気持ちを初めて抱えて満足している。


 節分の豆まきはまあふつうにやった。あと、ある方向を向いて黙って太巻きを食べるやつもやった。それぞれそっぽ向いて食べたけど、内心「変なおまじない」と思っているので、みんな半笑いだった。