よくわかっている

 晩メシ後にタバコを買いに行こうと玄関のドアを開けて外に出たら、二十メートルくらい向こうに野良犬がいてずっとこっちを見ていた。困ったのは、その野良がなんとも微妙な表情をしているところだった。今にも吠えかかってきそうな表情でもあるし、なんか食いもんがあったらくれ、というような感じにも見える。二十メートル先でじっとしたままこちらを見ている。
 なつくのか吠えるのか、なんとも緊張感あふれる犬だけど、なるだけ目を合わさないようにして道を渡り、自動販売機でタバコを買って家に帰った。玄関のドアを開けると、廊下から外の様子を見ていたばあさんが言う。
「ドアちゃんと閉めてよ、犬が入ってくるから」
 ほほう、やはりアイツは激しい犬なのか、アイツに追っかけられでもしたかばあさん、と思いつつドアをぴしゃり。すると、
「たまにエサ食べに来る犬なのよ。今日は余り物がないから来られても困る」
 野良犬を手なづけたいのか、それとも追っ払いたいのか、そりゃ向こうも微妙な顔になるわ。